五輪と働き方改革とインテリア

インテリアは、当たり前ですが、「生き方」ととても密接な関係があります。

私の「師匠の師匠」にあたる澤山乃莉子さんは、ロンドン五輪の前後を現地で経験されて、「住まいの大変革のきっかけになった」とおっしゃっています。→(コラム・オリンピックとインテリア

そんなことを大いに期待しつつ。

私がもう一点、今が「住まいの大転換期」になると思っている理由は、「働き方改革」です。

 

 

過労自殺をなくそうとか、結婚・出産・共働きを成立させるため、転勤を減らしている企業が多くなっているとのこと。

私は、社会に出て即転勤族になりましたので、とってもよくわかるのですが、これはものすごく大きな変化をインテリアにもたらすと考えています。

まず、駆け出しの記者は地方から記者生活が始まります。私の場合、地方生活は短い方で4年半でしたが、だいたい2箇所、長くて6年を地方で過ごすことになります。

ちょっと愚痴になりますが。

23〜28歳という時期を、絶対永住はしない地域で過ごすのは、女性記者の「婚活」には大きな痛手でした。同業者でなければ、出会う相手は県警や県庁職員、あるいは自営業。仮にお付き合いした男性がいたとしても、2年後には会社をやめない限り絶対に離れ離れになるのですから、そんな無駄な時間は費やせません。

男性記者は、県庁の一般職の女性とか、支局の庶務の女性とか、地元企業の受付嬢をゲットすれば、転勤を機に結婚して連れ去ることができるのですが、すでに地方で安定した職業を得た男性を地元から引き剥がすのは相当難しい。なので、その時期はほとんど「結婚に向けての活動はできない」時期でした。

その後、大阪・東京・名古屋といった本社を2〜3回行き来します。この間にどれだけオーダーカーテンを買ったことか。合計で200万円ぐらいはカーテンに使っています。

常に転勤に備える暮らしとはどういうものか。

私は入社1年目に、3人がけのソファを買いました。その話を職場の人にしたら「転勤があるのにどうして家具を買ったんだ。転勤の時にどうするんだ」と言われました。私の感覚では、ソファは日常生活に必須なものなので、どこに行こうが持っていけばいいと思っていましたが、一般的に、引越しを前提とした生活をしている独身の人は、それなりの家具など買おうと思わないのです。つまり、大学出たての時期の「5年」は、ほとんど永遠に匹敵するぐらい長いのですが、「果てしない仮住まい」が続くわけです。

「いつでも辞令ひとつで転勤」は30代に入っても続きました。転居を伴わない異動も含めて、部員の半数以上が異動対象になり、見送られる側の方が、見送る側より多い、ということも、よくありました。

なぜ、日本のサラリーマンが、こんなにも転勤に対して寛容なのか。

「転勤」というのは、少し前まで、エリートの証だったからです。

たとえば、警察庁や総務省のキャリア官僚は、28〜30歳ぐらいで、地方の県庁に「部長」に匹敵する肩書きで転勤します。銀行などでも、「大手」に勤めているから、転勤があるのです。転勤は、一流大学を卒業した「エリート」が「大企業」に就職したことの証。今でも海外駐在に憧れる人がいるのと同じ。行き先がヨーロッパや北米でなくても、現地の不便な生活を補う、相応の手当がつきます。地方転勤もそういう意味では「割とおいしい」話だった。

だから、企業はある意味「ご褒美」的なニュアンスも含めて「転勤」を社員に言い渡せたのです。また、結婚した男性社員は、雑多な引越し作業や子供の転校は奥様がやってくれるから、奥様は奥様で「奥様の職責」として引越し作業を行う。内助の功というやつです。

が、時代は変わりました。

共働きが増えました。夫に転勤を言い渡すということは、妻が別の会社で勤務している場合、同時に夫婦に別居を命じることになるわけです。そして、だいたいは残った妻の方が、ワンオペで育児と仕事を両立することになる。専業主婦が多かった時代は、単身赴任は「その家庭の判断」だったわけで、企業はほっかむりをできるのですが、夫も妻も正社員であることが普通になってきた昨今では、それを無視できる状況ではなくなった。

また、子供をつくりにくくなる。

私が長野にいた頃、他社の記者(男性)に子供ができたと聞いて、長野県警記者クラブは驚きに包まれました。なぜなら彼の妻は同じく記者で、横浜で勤務していたからです。「いつつくったんだ」「本当に彼の子供なのか」と、祝福を込めてからかわれていました。しかし、これまで振り返っても、夫婦別居状態で子供を設けるのに成功したカップルは、それ以外記憶にありません。やはり「別居」は、大きなハードルなのです。

さらに。少子化で人手不足が続いています。いまどきは、どんな一流企業でも、採用が昔より難しくなってきていることでしょう。転勤がある会社はいやだ、という若者が増え、転勤が前提の就職先は敬遠されるようになった。それでは優秀な学生を採れない!ということで、軽々に転勤を命じる企業風土というのはなくなってきているようなのです。

転勤がなくなるということはどういうことか。

人間の10年先などわからないものですが、自分でライフプランが立てられる、ということなのです。

今いるところで相手を見つければ、すなわち結婚の対象になる、というのは、当たり前の人には空気みたいに当たり前ですが、そうでない人には越えられない壁です。○才までに結婚して、○才までに家を買って、○才までに子供を産む、みたいな計画は、本当に一切立てられない。もし私に転勤がなかったら、絶対に2年は早く結婚していました。

ライフプランは、本人がそう思い込んでいれば、大抵そのようになると、私は思います。となると、自分が一応「終のすみか」と考えて家を作るのであれば、おのずとインテリアを勉強するし、少しでも住宅のクオリティやインテリアのクオリティにこだわりたいと思うものです。

そうなれば、「家」は人々の中心になっていきます。

おそらく、日本の「住まい」はいまココなのです。

 

 


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