阪神大震災への祈り

世の中のいろんなことについて、個人的に発信することはずっと控えてきました。

新聞社を離れ、自分の文章として、ひとつ書きたいことがあります。

阪神大震災です。

 

この3号神戸線の倒壊で、阪急今津線が寸断、私が受験しようとした大学へのルートが変更されました。

そんなことがあっても、私は、被災者ではありません。あの日、私は大阪でも京都寄りの地域に住んでおり、「もうちょっと揺れたら起きようかな」と思い、親に叩き起こされました。というぐらい、被災者ではありません。極めて局所的に起きた地震で、情報が全然流れて来なかったのです。

東日本大震災の発生時も、絶妙に東京にいませんでしたから、3.11は、どうしても「対岸の火事」的な立ち位置になっていると思うのですが、それでも、全てが海に流れてしまった東日本大震災と、神戸市長田区など、瓦解してしまった神戸の下町一帯にじわじわと迫りくる火災が、どうやっても消防車が入れず、火災が1週間延焼するのを見てるしかなかった、そのまま全壊した自宅にいる、生きているかもしれない家族ごと燃えてしまう、そんな絶望的な事態に直面した経験は、おそらく神戸しかないと思います。生きたまま業火に焼かれたのです。

 

 

当時、関西は、「地震がないねん」という根拠のない自信に満ち溢れていました。

そういうすぐに現状を侮るところが、関西の悪い癖ですね。

だから、丸腰でした。避難所とか、避難バッグなんてものを用意している家庭なんて、聞いたことがなかったですし、毛布一枚持って避難所に行けた人とそれを持って出れなかった人との格差が、避難所内ではあったといいます。寒い、水も食べ物もない、トイレがない、プライバシーなんてあるわけない。学校が再開されても、学校の一角に設けられた避難所が撤去できず、避難している人と、小学生が一緒にいる、という異常事態は、数年続きました。

マスコミも初めての事態にヘリを飛ばしまくって映像と写真を撮りまくり(ヘリの轟音で、救助を求める声が聞こえなかったとも言われました)、しかしマスコミはマスコミで、どこを撮っても「最悪」を象徴する絵が撮れたことに、興奮と使命感を持ってやっていたと思います。寒い、食べ物がない、トイレがない、という現場で。すべてが初めてで、すべてあの時に学んだことだったのです。

今なら、お皿にラップを敷いて食事をすれば、お皿を洗わなくて良いとか、トイレで大きい方をするときは、ビニールに受けて、別のところに置くべき、といった、数限りない、ちょっとした避難のTIPSがありますが、当時はまったくなんにもなかったのです。避難所は地獄。整然とした地獄でした。

人口減少のムードもありませんでしたから、空いている公営住宅を被災者復興住宅にする、といった発想が出て来なかった。おそらく、なにかしらいろいろと法律的な縛りがあって、難しかったのだろうと思います。また、まだ人口が減少する局面ではなかったですから、空いている公営住宅というのも東日本の時ほどなかったのかもしれません。本当に、ずいぶん長いこと、バラックのような家に人々が留め置かれたのでした。

時々思うのです。アメリカなどで被災者がトレーラーハウスで寝起きしているのを見ると、はたして、被災者住宅とどっちがいいのだろうかな?と。

 

そして、いまだに82年の耐震基準が、中古住宅では一定の評価を得ていることと思います。

その後に何度も耐震基準は改定されていますが、82年の耐震基準をクリアした住宅は、阪神大震災で壊れなかった、ということが、これ以上ないエビデンスになり、中古住宅に値がつく根拠にもなりましたし、おそらく「耐震基準をクリアしてたら、効果あるんだね!」という手応えを得たところがあったと思います。

全部阪神大震災のあとです。ちなみに、私がまだ大学生の頃、東京にきたら、新聞は他の国のように、震災の話が載っていなくて驚きました。東日本大震災は「東京本社管内」、阪神大震災は「大阪本社管内」で、この構図はどの新聞社も放送局も同じです。ですから、東京にずっといた人が、阪神大震災を東日本大震災のように感じているはずはないのです。東日本大震災の時のNHKの報道は、大変素晴らしかった。大きな地震に備え、あらゆる省庁(自衛隊など)と、画像を共有できるような体勢を組み、そのメンテナンスを続けてきたことが如実にわかる報道でした。NHKは、阪神大震災から全てを学び、有益でどんな災害が現在起きているのかを的確にキャッチできる情報源を用意し続けていたのです。それは、我々在野のマスコミにはリソースがさけないレベル、と感じました。

長い時が経ちました。

「とにかく、死なない手立てを」。

その後神戸の被災地で散々連載や声を集めてきて、一番多く聞かれた言葉でした。

25年前、日本に地獄が、ありました。


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